糖尿病とは

糖尿病のイメージ写真

膵臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンが作用不足になってしまうことで、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が慢性的に上昇している状態のことを糖尿病と言います。
血液中のブドウ糖は脳などのエネルギー源になるものです。細胞に取り込まれることで役割を果たしますが、その際はインスリンの働きが必要となります。
このインスリンが何らかの原因で機能しなくなると、ブドウ糖は血液中に留まってしまい、慢性的に上昇したままとなってしまうのです。

糖尿病は発症しても初期から症状が現れることはありません。
ある程度進行すると、頻尿・多尿、喉の渇き、全身の倦怠感、体重減少などがみられます。
ただ症状がなくても、高血糖な状態は、それだけで血管を傷つけます。
そのため細小血管がダメージを受け続けると、これらが集中する網膜、腎臓、末梢神経等で障害が起きるようになります。これを糖尿病三大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)と言います。
これらの放置が過ぎれば、失明、透析、足切断に至ることもあります。

また太い血管については、動脈硬化を促進させます。
この場合も放置が続けば、脳血管障害(脳梗塞 等)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、閉塞性動脈硬化症などの合併症を発症することもあります。

糖尿病の種類

糖尿病のタイプは大きく分けて4つ(1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序、疾患によるもの、妊娠糖尿病)あると言われています。
1型糖尿病は、主に自己免疫疾患によってインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほぼ分泌されていない状態を言います。
2型糖尿病は、遺伝的に糖尿病になりやすい体質の方に不摂生な生活習慣(肥満、運動不足、ストレス 等)が組み合わさることで発症するようになります。
この場合、膵臓は疲弊した状態になっており、インスリンの分泌量が少ない、もしくはインスリンの量が十分でも効きが悪い状態(インスリン抵抗性)になっています。
ちなみに2型糖尿病の患者数は、全糖尿病患者さまの9割以上を占めるとされ、中高年世代で肥満体型の方が多いとされています。

また、「その他の特定の機序、疾患によるもの」とは、遺伝子異常や他の病気(膵疾患、肝疾患、内分泌疾患 等)、薬物(ステロイド薬 等)などの影響によって発症する糖尿病のことを言います。

妊娠糖尿病は、正式な糖尿病ではありません。
妊娠中(妊娠後半期)に分泌される胎盤ホルモンは、インスリン抵抗性を増大させるので、糖代謝異常が起きやすくなります。
このことを妊娠糖尿病と言います。
なお妊娠前から糖尿病を発症している、妊娠中に明らかな糖尿病がみられたという場合は、糖尿病の扱いとなります。

糖尿病の診断基準

血液検査によって発症の有無を確認します。診断基準の数値については次の通りです。

  1. 早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上、または75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上、もしくは随時血糖値が200mg/dL以上
  2. HbA1c値が6.5%以上

①と②ともに基準の数値を超えていると糖尿病の診断を受けます。
①もしくは②のどちらか一方のみが基準値を超えているとなれば「糖尿病型」の判定を受けます。
この場合、再検査が必要です。
その結果、同様にどちらか一方だけ超えているとなれば、糖尿病と診断されます。

治療について

1型糖尿病の患者さまの場合、体内のインスリンが完全に不足している状態です。
そのため、インスリンを体外から補充していきます(インスリン注射)。
このほか、食事療法や運動療法など生活習慣の見直しも必要です。

2型糖尿病の患者さまでは、インスリンが少しは分泌されている状態なので、まずは生活習慣の改善から行います。
この場合、食事療法と運動療法がメインで、禁煙や禁酒なども実践します。
食事療法では、カロリーの摂取を適量にします。
また食事では食物繊維の多い食品(野菜、きのこ、海藻類 等)を積極的に摂取し、炭水化物や脂質、タンパク質は制限していきます。

また運動はインスリンの働きを改善させます。
その内容は、全身を動かす有酸素運動(散歩、ジョギング、水泳 等)になります。
運動の強さに関しては、全力の6割程度が良いとされています。
ただ糖尿病の患者さまについては、運動を禁止、あるいは制限を受けている方もいますので必ず運動前に医師に相談するようにしてください。

上記の生活習慣の改善だけでは、血糖コントロールが難しいと医師が判断すれば薬物療法(経口血糖降下薬)も行います。
この場合、患者さまのタイプによってインスリン抵抗性を改善させる薬、インスリンの分泌を促進させる薬、糖吸収を遅らせる薬などを使用していきます。
これら経口血糖降下薬でも改善が困難という場合は、インスリン注射となります。

また妊娠糖尿病の患者さまも2型糖尿病の患者さまと同様に食事療法を行っていきます。
それでも血糖コントロールが難しいという場合は、インスリン注射による薬物療法となります。
ちなみに妊婦さんの経口血糖降下薬の使用は禁忌となっています。